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胃潰瘍は胃の粘膜の下にある筋層まで損傷が及んでいる状態で、みぞおち辺りの痛みや吐き気などの症状がみられます。主な原因としてストレスが挙げられますが、実はその他にもさまざまな原因によって引き起こされる病気です。
この記事では、胃潰瘍を引き起こす原因について詳しく解説します。胃潰瘍の症状や検査方法、治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
胃潰瘍は、何らかの原因によって粘膜が傷つけられ、その損傷が粘膜下にある筋層にまで及んでいる状態です。
胃潰瘍には急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍の2種類あり、それぞれ以下のような違いがあります。
びらんは粘膜表面が欠損した状態、潰瘍はさらに深くまで欠損した状態です。
急性胃潰瘍は症状が軽いことが多いものの、急激に症状が進行することがあります。
慢性胃潰瘍は治癒と再発を何度も繰り返すため、根気強く治療を続ける必要があります。
胃潰瘍の主な原因の一つとしてストレスが挙げられますが、原因となるのはそれだけではありません。
胃潰瘍の原因は以下が挙げられます。
ここでは上記6つの原因についてそれぞれ解説します。
イライラや過労、緊張、不安、睡眠不足などからくる肉体的・精神的ストレスは自律神経のバランスを乱し、胃の働きに大きな影響を与えます。交感神経が優位になると胃酸の分泌が促進され、胃の粘膜が刺激されやすくなるのです。
ストレスによって食欲が低下したり、逆に暴飲暴食をしてしまったりすることも、胃への負担を増やす要因となります。さらにストレスが長期間続くと胃の粘膜の血流が悪化し、修復能力が低下することで、潰瘍ができやすくなります。
直接的な原因ではないものの、ストレスが胃潰瘍の発症や悪化に関与することは確かです。そのため適度な運動や十分な睡眠、リラックスする時間を確保することが、胃の健康を守るために重要になります。
ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の主な原因とされています。ピロリ菌の活動によって胃の粘膜が慢性的に炎症を起こし、最終的に潰瘍へと進行することがあるのです。
ピロリ菌感染は主に幼少期に起こるとされ、汚染された水や食べ物、または家族間の口移しによる感染が考えられます。
ピロリ菌に感染している場合は、除菌治療により菌を除去することで、胃潰瘍の予防や治療につながります。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、痛みや炎症を抑えるために広く使用される薬ですが、胃潰瘍を引き起こすリスクがあります。
この薬はプロスタグランジンという物質の生成を抑えることで炎症を鎮めますが、同時に胃の粘膜を保護する働きも低下させてしまいます。その結果、胃酸によるダメージを受けやすくなり、潰瘍が発生しやすくなるのです。
特に長期間非ステロイド性抗炎症薬を使用している人は、そのリスクが高まるため注意が必要です。
香辛料の多い食べ物や酸味の強い食品、熱すぎる飲食物などは、胃粘膜を刺激し、胃酸の分泌を促進することで胃に負担をかけます。
特に唐辛子やニンニク、酢のような刺激の強い食品を頻繁に摂取すると、胃の粘膜が炎症を起こしやすくなり、胃潰瘍のリスクが高まるため注意が必要です。
炭酸飲料や柑橘類のような酸性の飲み物も、胃酸の分泌を増やし、胃粘膜を荒らす原因になります。
さらに、脂っこい食事は消化に時間がかかるため、胃に長時間負担をかけることになります。
胃潰瘍を予防するためにはこれらの食品の摂取をなるべく控え、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
胃潰瘍の原因として、喫煙・飲酒・コーヒーが挙げられます。
胃潰瘍の原因 | 理由 |
---|---|
喫煙 | 胃粘膜の血流を低下させる |
飲酒 | 胃粘膜を直接刺激して傷つける 胃酸分泌を促進し、胃粘膜の防御機能を低下させる |
コーヒー | 胃酸の分泌を促進し、胃への負担を増やす |
胃潰瘍の予防・治療のためには、タバコやお酒、カフェインはなるべく控えることが大切です。
不規則な食生活は胃酸の分泌リズムを乱し、胃粘膜に負担をかける要因となります。特に暴飲暴食、早食い、食事の時間がバラバラ、寝る直前に食べるといった習慣は、胃の働きを不安定にし、胃酸が過剰に分泌される原因になります。
また長時間空腹の状態が続くと、胃酸が胃粘膜を直接刺激し、胃痛や胃もたれなどの症状を引き起こしやすくなるため注意が必要です。
規則正しい食事を心がけることで、胃の健康を守ることにつながります。
胃潰瘍の主な症状は以下の通りです。
ここでは上記6つの症状についてそれぞれ解説します。
胃潰瘍の最も多くみられる症状が、胃やみぞおち辺りに起こる「キリキリ」「しくしく」と表現される痛みです。
特に食事の前後に痛みを感じることが多く、空腹時に悪化する場合もあります。
強い痛みが続く場合や食事をとると悪化する場合は、潰瘍が深刻化している可能性があるため、速やかに医師の診察を受けることが大切です。
胃潰瘍が進行すると胃の粘膜が刺激され、吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。特に食事の後に気持ち悪くなることが多く、食欲が低下するケースも少なくありません。
嘔吐が頻繁に起こる場合は、胃の働きが悪くなっている可能性があり、症状が長引くと栄養不足や脱水症状につながることもあります。
軽度の吐き気であれば一時的なこともありますが、繰り返し起こる場合は、胃潰瘍の悪化を防ぐためにも医師に相談することが大切です。
胃潰瘍が悪化し、潰瘍部分から出血すると、吐血を伴うことがあります。さらに出血が続くと貧血になり、めまいや倦怠感を感じることもあります。
唾液に血が混ざる程度であれば緊急を要しないこともありますが、大量に吐血したり、吐血が継続したりする場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
胃潰瘍が進行して胃の粘膜から出血すると、黒色便(タール便)として下血の症状が現れることがあります。これは血液が胃酸によって分解され、黒っぽく変色するためです。
大量に出血した場合は貧血を引き起こし、めまいや息切れ、倦怠感を伴うこともあります。
下血が見られた場合は潰瘍の悪化や胃からの出血が疑われるため、早急に医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。
胃潰瘍の痛みはみぞおち周辺に現れることが多いですが、場合によっては背中にまで広がることがあります。
特に潰瘍が進行して膵臓まで炎症が及ぶと、神経を刺激し、背中の痛みとして感じることがあります。胃の痛みと同時に背中の痛みを感じる場合は、潰瘍が悪化している可能性があるため、早めの診察が必要です。
胃潰瘍の影響で胃酸過多になると、げっぷが頻繁に出たり、胃酸が逆流して胸やけを引き起こしたりすることがあります。また胃の中の環境が乱れることで口臭が強くなることもあります。
しかしこれらの症状は他の病気でも見られるため、気になる場合は早めに医療機関を受診し、適切な検査・治療を受けることが大切です。
胃潰瘍の検査方法は、胃内視鏡検査と胃X線検査の2種類あります。
ここではそれぞれの検査方法について詳しく解説します。
胃内視鏡検査は、細長い管状のカメラ(内視鏡)を口または鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察する検査です。
この検査方法は胃潰瘍の診断において最も有効であり、粘膜の炎症や潰瘍の深さ、出血の有無などを詳細に確認できます。
さらに内視鏡を使って組織の一部を採取し、ピロリ菌感染の有無やがん細胞の有無を調べることも可能です。「胃内視鏡検査は苦しい」というイメージを持つ方も少なくありませんが、鎮静剤を使用すれば苦痛を軽減できます。
胃X線検査は、造影剤(バリウム)を飲んだ後、X線を用いて胃の形状や異常を確認する検査です。
バリウムが胃の粘膜に付着することで、潰瘍やポリープなどの異常が浮かび上がり、胃の輪郭や変形の有無を詳しく評価できます。また、透視しながらリアルタイムで胃の動きを観察することも可能です。
内視鏡検査と比べて苦痛が少ないため、比較的受けやすい検査ですが、粘膜の詳細な状態や細胞レベルの診断はできません。そのため、異常が見つかった場合は、追加で胃内視鏡検査による精密検査を行うことが多いです。
胃潰瘍の主な治療方法は以下の5つです。
ここでは上記5つの治療方法について詳しく解説します。
胃潰瘍の薬物療法では、胃酸分泌抑制薬や胃粘膜保護薬が処方されます。症状によっては、吐き気を抑える薬や胸やけを抑える薬、腹痛を抑える薬などが処方される場合もあります。
薬には正しい服用方法や副作用があるため、きちんと理解したうえで服用することが大切です。
胃潰瘍の大きな原因の一つであるピロリ菌の感染が確認された場合、除菌治療が必要になります。
除菌治療では、1種類の胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗生物質を1週間服用することで、ピロリ菌を除去します。
一回目の除菌治療成功率は75~90%で、除菌に失敗した場合は、二回目の除菌治療が必要です。
ピロリ菌を除菌することで胃潰瘍の症状を改善するだけでなく、胃潰瘍の再発リスクや胃がん発症のリスクを大幅に減少させることができます。
胃潰瘍の治療では、薬の服用だけでなく、生活習慣の改善も重要です。
具体的には刺激の強い食べ物やアルコール、カフェインの摂取を控え、消化に良い食事を心がけることが大切です。
またストレスも胃潰瘍の大きな原因の一つとなるため、リラックスする時間を確保し、十分な睡眠をとってストレスをため込まないように工夫する必要があります。
内視鏡的治療は、胃潰瘍による出血や穿孔が発生した際に行われる治療法です。内視鏡を使って出血部位を直接確認し、止血処置を行います。
開腹手術をせずに止血が可能なため、従来の外科的治療を行うケースは少なくなってきています。
外科的治療は、薬物療法や内視鏡的治療では改善しない重症の胃潰瘍に対して行われます。
特に穿孔(胃壁に穴が開いた状態)が起こった場合などに適応されます。
症状がひどい場合には、お腹の中に漏れ出た食物残渣や膿を綺麗に洗い流す手術(洗浄ドレナージ術)が必要です。
また外科的治療を行える医療機関は限られるため、連携病院を紹介してもらうケースもあります。
胃潰瘍の原因の一つとして、イライラや過労、緊張、不安、睡眠不足などからくる肉体的・精神的ストレスが挙げられます。ストレスをため込んでしまうと自律神経のバランスが乱れ、胃の働きに大きな影響を与えます。
またストレスだけでなく、ピロリ菌感染や非ステロイド性抗炎症薬、刺激の強い飲食物の過剰摂取、喫煙・飲酒・コーヒー、不規則な食生活なども原因となるため注意が必要です。
胃潰瘍では主に胃やみぞおち辺りに痛みが生じる症状がみられますが、無症状のまま進行するケースもあるため、定期的に検査を受けることが大切です。
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