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胃潰瘍は胃酸により胃の粘膜が傷つけられることで起こる病気です。
症状が悪化すると合併症によって命にかかわることもあるため注意しなくてはいけません。
年々患者数が減少してきている病気ではあるものの、2017年調査では推定2万人の患者がいることがわかっています。
この記事では、胃潰瘍の症状について詳しく解説します。
胃潰瘍の原因や検査・診断方法、治療方法などをまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
胃潰瘍は『消化性潰瘍』とも呼ばれるもので、胃酸と胃の粘膜のバランスが崩れることにより、粘膜下にある筋層までダメージが及んでしまっている状態です。
急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍の2種類があり、急性胃潰瘍の場合は不整形の潰瘍(深い傷)やびらん(浅い傷)の多発、慢性胃潰瘍の場合は円形潰瘍が多発する特徴があります。
早期に治まることが多い病気ですが、何度も再発を繰り返すことがあり、医療機関での適切な治療が必要です。
胃潰瘍は男性に多い病気といわれていましたが、近年は更年期の50代女性や若い人の発症率も高まってきています。
胃潰瘍の主な症状として以下のようなものが挙げられます。
ここでは上記5つの症状についてそれぞれ解説します。
胃潰瘍を発症した多くの人が自覚する症状として、みぞおち付近の腹痛が挙げられ、特に食事を終えたあたりから痛みが出てくる特徴があります。
反対に、空腹時に痛みが出る場合は、十二指腸潰瘍の可能性が高いです。十二指腸潰瘍は空腹時に腹痛が起こり、食事を摂ると症状が緩和します。
また胃潰瘍の症状が悪化すると、食後や空腹時を問わず腹痛が起こるようになります。
胃潰瘍の主な症状として、吐き気・嘔吐・食欲不振が挙げられます。
これは胃液の分泌量が多くなり、胃粘膜とのバランスが崩れてしまうことにより生じるものです。
ただしこの症状は胃潰瘍に限らずほかの病気でも起こり得るもののため、正確な診断のためには検査が必要となります。
胃潰瘍の炎症が広がってくると、背中に痛みを感じる場合があります。特に脊椎を支える筋肉に痛みが生じる場合が多いです。
この症状が出る場合は膵臓近くまで胃潰瘍が進行している可能性が高いです。
また膵臓がんでも似たような症状が起こるため、内視鏡検査や超音波検査による検査・診断が必要となります。
胃潰瘍により胃で出血が起こると、吐血することがあります。
胃潰瘍の吐血は胃酸によってどす黒くなっており、泡沫状をしています。
ただし吐血の色は出血量と胃酸にさらされていた時間によって異なるため、必ずしも上記のような状態ではないという点に注意が必要です。
出血量が多い場合は鮮やかな赤色をしている場合もあり、血圧低下や貧血などの症状も起こります。
吐血は重篤な症状となるため、すぐに医療機関を受診しましょう。
吐血と同様、下血も胃潰瘍により胃で出血が起きている場合に起こる症状です。
便に血が混じることでどす黒い色の便になり、これは『タール便』と呼ばれます。
下血は気づかないケースも少なくなく、出血量が多くなり貧血状態になってからようやく気づく場合もあります。
吐血と同様に重篤な症状となるため、一刻も早い検査・治療が必要です。
胃潰瘍の主な原因は以下の通りです。
ここでは上記6つの原因についてそれぞれ解説します。
胃潰瘍の主な原因の一つとして、ストレスが挙げられます。
直接的な原因となるわけではありませんが、ストレスによって自律神経に異常が生じると胃潰瘍が発生しやすくなる可能性があるのです。
自律神経が乱れると副交感神経が活発になり胃液の分泌量が多くなります。
また交感神経が活発化すると胃の粘膜を保護する粘液の分泌量が低下するため、胃の粘膜と胃液のバランスが崩れ、胃潰瘍が発生するというメカニズムです。
ストレスの原因には過労、睡眠不足などさまざまな原因があるため、ストレスをため込みやすい方は特に注意が必要です。
胃潰瘍の原因の一つとして、ピロリ菌の感染が挙げられます。
ピロリ菌は胃潰瘍と深い関係があるとされており、胃潰瘍の方の70~90%はピロリ菌に感染しているとされています。
ピロリ菌は胃に生息する細菌の一種で、感染すると胃の粘膜を荒らし、胃潰瘍や胃がんをはじめとしたさまざまな病気の発症原因になります。
刺激の強い飲食物の過剰摂取は胃に負担をかけるため、胃潰瘍の原因となることがあります。
具体的にはコショウや唐辛子、にんにくなどの香辛料を使った料理や炭酸飲料などです。
上記のような刺激の強い飲食物を好んで食べる方は注意しましょう。
胃潰瘍は薬の長期服用によって引き起こされる場合もあります。
特に腰痛や膝痛、関節リウマチの治療に使われる非ステロイド性抗炎症薬などは、胃腸の粘膜を荒らしてしまう副作用があるため注意が必要です。
非ステロイド性抗炎症薬を継続的に服用することによって生じた潰瘍は『NSAIDs潰瘍』と呼ばれます。
医療機関で処方される薬だけでなく、ドラッグストアなどで購入可能な鎮痛薬でも起こりうる症状となります。
また鎮痛薬のほかにも注意が必要なのが、心筋梗塞や脳梗塞の治療に処方される抗血液凝固薬です。
非ステロイド性抗炎症薬と比べると発症リスクは低いとされますが、同様の副作用を持ちます。
抗血液凝固薬は胃潰瘍の発生リスクよりも服用をやめた場合のデメリットの方が大きいため、基本的に服用中止は推奨されません。
薬の長期服用によって胃潰瘍が発生した場合は、医師と相談のうえで治療方法を検討する必要があります。
喫煙・飲酒・コーヒーも胃潰瘍の発症原因の一つです。
喫煙は胃粘膜の血流を低下させるため、胃潰瘍の発症リスクを高めます。
また飲酒やコーヒーを大量に飲む習慣がある場合は胃への負担が大きくなり、胃潰瘍の原因となる可能性があります。
暴飲暴食や早食いは胃に負担がかかる行為のため、胃潰瘍の発症リスクが高まります。
そのほかにも食事後すぐに横になる、よく噛まずに飲み込むなども、胃潰瘍を引き起こす恐れのある生活習慣です。
胃潰瘍の検査・診断方法には胃内視鏡検査(胃カメラ)、胃X線検査(胃バリウム検査)、ピロリ菌検査の3つの方法が挙げられます。
胃内視鏡検査(胃カメラ)は、鼻や口から内視鏡を挿入し、胃の中をカメラで直接観察する検査方法です。
胃だけでなく、食道や十二指腸の健康状態も同時に確認できます。
胃内視鏡検査は内視鏡を挿入するときの咽頭反射(えづき)や検査中の圧迫感や不快感がデメリットに挙げられますが、経鼻内視鏡検査や鎮静剤を使用した検査により苦痛を和らげることが可能です。
胃X線検査よりも微細な病変も確認でき検査精度も高いため、基本的には胃内視鏡検査が推奨されます。
胃X線検査(胃バリウム検査)は、バリウム(造影剤)と発泡剤の2種類の液体を飲んだ後、レントゲン撮影によって胃の中を観察する検査方法です。
胃内視鏡検査のようにカメラを飲み込む苦痛や不快感が生じないため、検査が比較的楽というメリットがあります。
ただし胃X線検査は胃内視鏡検査とは異なり、レントゲン撮影による2D的な情報しか得られません。
胃内視鏡検査よりも得られる情報が少なくなる分検査精度も低くなり、病変の見落としが発生するリスクがあります。
また胃X線検査で異常が見つかった場合は、日を改めて胃内視鏡検査を受ける必要があります。
この場合は検査の二度手間が発生することになるため、何か特別な事情がなければ胃内視鏡検査を選ぶのがおすすめです。
ピロリ菌検査では、胃潰瘍の主な原因といわれるピロリ菌の感染有無を確認できます。
ピロリ菌検査の方法には内視鏡を使う方法と使わない方法があり、それぞれの検査方法は以下の通りです。
内視鏡を使う方法 | 迅速ウレアーゼ試験法 | ピロリ菌が持つウレアーゼの性質を利用した検査方法。内視鏡で採取した粘膜に特殊な反応液を使用し、色の変化で判定する。 |
組織鏡検法 | 内視鏡で採取した粘膜を特殊な薬剤で染色し、顕微鏡でピロリ菌を探す検査方法。 | |
培養法 | 内視鏡で採取した粘膜をすりつぶし、ピロリ菌の発育しやすい環境で5~7日間培養する検査方法。 | |
内視鏡を使わない方法 | ピロリ菌抗体測定法 | 血液検査や尿検査により、ピロリ菌の交代の有無を調べる検査方法。 |
尿素呼気検査法 | ピロリ菌が持つウレアーゼの性質を利用した検査方法。診断薬を服用後、呼気に含まれる二酸化炭素の比率によってピロリ菌の有無を調べる。 | |
糞便中抗原測定法 | 糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる検査方法。 |
医師と相談のうえで、自分に適した検査方法を選びましょう。
胃潰瘍の治療方法は以下の通りです。
ここでは上記4つの治療方法について解説します。
胃潰瘍の治療方法の一つとして、食事療法・生活指導が挙げられます。
症状が激しい場合は出血の危険性があるため、食事制限が必要です。
ある程度症状が軽くなってきたら、消化の良い柔らかい食べ物を少量ずつ回数を分けて食べる食事療法に切り替えます。
このような食事の摂り方をすることで、胃への刺激を抑えることが可能です。
また早食いなどの食事習慣も胃に大きな影響を与えるため、規則正しい習慣を身につける必要があります。
薬物療法は、胃潰瘍の初期治療に用いられる治療方法です。
処方される薬には以下のような種類があります。
出血穿孔などの合併症のない胃潰瘍であれば、薬物療法で2か月程度で治癒する可能性が高いです。
ただし胃潰瘍は再発しやすい特徴があるため、ピロリ菌保菌者の場合は除菌治療を行うなどの追加治療が必要となるケースもあります。
出血を伴う胃潰瘍の場合は、内視鏡的治療が行われます。
ステンレス製クリップで止血するクリップ法や熱エネルギーによって止血するアルゴンプラズマ凝固法などがあり、どの止血術も外科的治療に比べて身体的負担が少ない特徴があります。
入院期間も短いため、社会復帰までの期間を短縮できる点も大きなメリットです。
穿孔が起きている胃潰瘍の場合は、外科的治療が行われます。
穿孔は腹膜炎の心配があるため、胃の2/3程度を切除する術式が一般的でしたが、近年は腹腔鏡を使用し大部分を残して腹腔洗浄を行う治療も増えてきています。
従来の手術よりも入院日数が短く、身体的負担が少ない点が特徴です。
胃潰瘍は胃酸と胃の粘膜のバランスが崩れ、粘膜下にある筋層までダメージが及んでしまっている状態です。
主な症状としてみぞおち付近の腹痛や吐き気・嘔吐・食欲不振、背中の痛み、吐血、下血などが挙げられます。
これらの症状が現れたらすぐに医療機関を受診し、適切な検査・診断を受けましょう。
胃潰瘍の検査・診断方法には胃内視鏡検査(胃カメラ)、胃X線検査(胃バリウム検査)、ピロリ菌検査などが挙げられますが、基本的には胃内視鏡検査を選ぶのがおすすめです。
胃X線検査よりも検査精度が高く、組織採取が行えるため診断を効率的に進められます。
大沼田メディカルクリニックでは、負担の少ない経鼻内視鏡検査を行っています。
鎮静剤点滴によってウトウトと眠ったような状態で検査が受けられるため、内視鏡検査の経験がない方もぜひ当院まで気軽にご相談ください。
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