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寄生虫の一種であるアニサキスが体内に入り込むと、『アニサキス症』という食中毒を発症することがあります。
アニサキスは主に生鮮魚介類に寄生する寄生虫のため、刺身を食べる際は特に注意が必要です。
この記事では、アニサキス症の症状について詳しく解説します。
アニサキス症の感染経路や検査・治療方法、予防・対策方法、よくある質問などをまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
アニサキスは約1.5〜3cmの白い糸状の体をした寄生虫の一種です。
主にサバやアジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。オキアミを捕食する魚に寄生するため、オキアミを捕食しない魚はアニサキスの危険性がありません。
アニサキスは寄生している魚介類が死亡すると、内臓から筋肉へと移動する習性があります。
そのため死後すぐに捌かれなかった生の魚介類を食べる場合、筋肉に移動したアニサキスに気づかずそのまま食べてしまうケースがあるのです。
そして胃の中にアニサキスが寄生することでアニサキス症を発症してしまいます。
アニサキス症の症状には以下の4つの種類があります。
ここでは上記4つの症状についてそれぞれ解説します。
胃アニサキス症は、魚介類を介して体内に入り込んだアニサキスが胃の壁に突き刺さることで発症する食中毒です。
食後数時間から十数時間後に激しい胃の痛みや吐き気、嘔吐などの症状が現れます。
胃アニサキス症で生じる腹痛は、胃壁にアニサキスが突き刺さる痛みによるものと考えられていましたが、アレルギー反応によるものと明らかになってきました。
またアニサキスが胃に入り込んでも全く症状が現れない方もいるため、症状には個人差があります。
胃アニサキス症は、内視鏡(胃カメラ)によりアニサキスを直接除去することで症状もすぐに改善されます。
腸アニサキス症は、体内に入り込んだアニサキスが腸の粘膜に潜り込むことによって発症するものです。
食後十時間から数日後に激しい下腹部痛や吐き気、嘔吐、発熱などの症状が現れます。
まれなケースとなりますが、腸閉塞(腸がむくんでしまう状態)や腸穿孔(腸壁に穴が開いた状態)を起こす場合もあり、その場合は入院治療が必要となります。
消化器外アニサキス症は、体内に入り込んだアニサキスが消化管を突き破り、腹腔内の別の部位に寄生することで発症する食中毒です。
非常にまれに起こるもので、アニサキスの寄生する部位によって異なる症状が現れます。
寄生部位に適した処置を行わなくてはいけないため、すぐに検査が必要です。
アニサキスアレルギーは、体内に入り込んだアニサキスが原因となりアレルギー反応が起きてしまう症状です。
食後6時間以内に蕁麻疹や血圧降下、呼吸不全、意識消失などの症状が起こることがあります。
ただし魚介類摂取後に起こる蕁麻疹は、アニサキスに対するアレルギー反応ではなく、魚に含まれるヒスタミンが原因で起こるアレルギー食中毒の可能性もあります。
魚の中にアレルゲンが含まれていることもあるため、アニサキスが原因となっているかどうかは採血検査による診断が必要です。
またアニサキスアレルギーの症状の中で最も重症となるのが、アナフィラキシーショックです。
急激な血圧低下や意識消失によって倒れてしまうこともあり、とても危険な状態になります。
アニサキス症は、アニサキスに寄生されている生の魚介を食べてしまうことにより発症します。
アニサキスは糸のような形をしており、よく見ると肉眼でも発見できますが、身の奥や皮の下に入り込んでしまっていることも少なくありません。
アニサキスが寄生していることが多い魚として、以下が挙げられます。
上記の魚を食べるときはアニサキスに十分注意する必要があります。
アニサキス症の検査・治療方法には以下のようなものがあります。
ここでは上記3つの検査・治療方法についてそれぞれ解説します。
アニサキス症が疑われる場合、胃内視鏡検査による検査・治療を行います。
胃粘膜に突き刺さったアニサキスが確認出来たら、胃内視鏡と鉗子を使用してその場で除去します。
胃の中にアニサキスが見つからない場合は腸アニサキス症が疑われるため、エコー(超音波検査)や大腸内視鏡検査が必要です。
胃内視鏡検査は鎮静剤を使用して苦痛や不快感を軽減できる場合があるため、医師に相談してみましょう。
エコー(超音波検査)は、胃内視鏡検査では確認できない小腸へのアニサキスの寄生が疑われる場合に行なわれる検査です。
胃内視鏡検査は食後6時間経たないと検査が受けられないため、その間にエコー検査を行う場合があります。
エコー検査ではアニサキス以外の原因が隠れている場合も確認でき、その後に胃内視鏡検査を行うことで適切な治療を行えるメリットもあります。
アニサキスが小腸に寄生しているなどの胃内視鏡検査による除去ができない場合、抗アレルギー剤や内服薬を使用して治療を行ないます。
薬による治療にはアニサキスを直接除去する効果はなく、自然と死滅するか体外へ排出されるまで薬で症状を抑える治療方法となります。
アニサキス症の予防・対策方法は以下の通りです。
ここでは上記4つの予防・対策方法についてそれぞれ解説します。
アニサキス症を予防するためには、食材を十分に加熱することが大切です。
アニサキスは約60度以上の温度で1分以上加熱することで死滅します。魚介類を調理する際は、中心まで十分に火を通すことが大切です。
特に大きいサイズの魚や厚みのある切り身は、全体に均等に熱が加わるように注意しましょう。
刺身や寿司など生で食べる場合は、十分に冷凍するなどの他の対策と併用することが望ましいです。
魚介類を刺身など生で食べる場合は、十分に冷凍することが大切です。
アニサキスはマイナス20度以下で24時間以上冷凍すると死滅します。
ただし注意しなくてはいけないのは、一般的な家庭用冷凍庫はマイナス18度までの設定となっていることが多いという点です。
この場合は死滅までにさらに時間がかかるため、2日以上は冷凍する必要があります。
また冷凍庫を頻繁に開け閉めすると庫内の温度が上がってしまうため、開け閉めは最小限にしましょう。
アニサキス症を予防するためには、新鮮な魚介類を選び早めに内臓を取り除くことが大切です。
アニサキスは魚の内臓に寄生する寄生虫ですが、寄生している魚介類が死んでから時間が経過すると筋肉へと移動します。
鮮度の悪い魚介類は筋肉へと移動している可能性が高く、内臓を取り除いただけではまだアニサキスの危険性が残っています。
新鮮な魚介類なら内臓にアニサキスが残っている可能性が高いため、早めに内臓を取り除くことでアニサキス症の発症リスクを大きく下げることが可能です。
アニサキスが寄生している可能性が高い魚をさばく際は、目視でアニサキスがいないか注意しましょう。
アニサキスは白くて細長い形状をしており、魚の内臓や身の中で肉眼で確認できることがあります。
表面にいるアニサキスは目視で確認できますが、身の中に入り込んでいるアニサキスは見落としてしまう可能性が高いです。
その場合はブラックライトを使用すると見つけやすくなります。
アニサキスは紫外線に反応して光る性質を持っているため、ブラックライトを使用することでアニサキスが光り、しっかり取り除くことができます。
アニサキス除去を目的に作られた『アニサキスライト』なども市販されているため、魚を生で食べる機会が多い方は購入を検討してみるのもいいかもしれません。
アニサキス症に関するよくある質問をまとめました。
ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。
アニサキスが寄生しやすい魚を生で食べた後などに以下のような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
アニサキス症は食後3~8時間後に上記のような症状が現れることがあります。
基本的に数日で症状は治まりますが、症状が出ている場合はすぐに医療機関を受診して適切な治療を受けるのがおすすめです。
胃内視鏡検査で除去できる胃アニサキス症であれば、その場で除去してすぐに症状が改善されます。
また、まれではあるものの腸閉塞や腸穿孔などの合併症を引き起こすことで急激に体調が悪化する可能性もあるため、なるべく早めに医療機関を受診した方が良いです。
アニサキスを食べても症状が出ない場合はあります。
アニサキスによって症状が出る要因としては、以下のようなものが挙げられます。
アニサキスの数が多かったり活発だったりすると、その分アニサキスの発症リスクが高まります。
アニサキスが寄生する部位には胃や腸、腹腔内などがありますが、部位によって症状の出方が異なるため、自覚症状があまりない場合もあるのです。
また、体質によっては全く症状が現れない場合もあります。
上記のような複数の要因が複雑に絡み合うことによってアニサキス症の症状が現れるため、アニサキスを食べた人全員に症状が出るわけではありません。
アニサキスは人間の体内では生きられないため、放っておいても自然治癒する可能性があります。
しかし症状が長引いたり合併症を引き起こしたりするリスクがあるため、基本的に自然治癒は推奨されません。
症状がある場合、すぐに医療機関を受診して胃内視鏡検査で取り除くことができれば、速やかに症状は改善されます。
また小腸にアニサキスがいる場合など直接取り除けない場合でも、薬によって腹痛や吐き気などの症状を抑えることが可能です。
腸閉塞や腸穿孔などの合併症を引き起こすと緊急手術が必要となるケースもあるため、アニサキス症の可能性がある場合は自然治癒を待たずに医療機関で適切な治療を受けましょう。
アニサキス症の症状は、アニサキスが寄生する部位によって異なります。
胃アニサキス症の場合は激しい胃の痛みや吐き気、嘔吐が現れることが多く、腸アニサキス症の場合は激しい下腹部痛や吐き気、嘔吐、発熱などの症状が現れます。
アニサキス症はアニサキスに寄生されている生の魚を食べると発症することがあるため、刺身やカルパッチョなどの生魚料理を食べる際は注意が必要です。
具体的には十分に加熱・冷凍する、新鮮が魚介類を選びすぐに内臓を取り除く、目視でアニサキスを取り除くなどの予防・対策方法があります。
アニサキス症が疑われる症状が現れた際は、自然治癒を待たずにすぐに医療機関を受診しましょう。
大沼田メディカルクリニックでは鎮静剤の点滴により苦痛を抑えた胃内視鏡検査が可能です。
アニサキス症が疑われる場合や、胃腸の不調を感じている方はぜひ気軽に当院までご相談ください。
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