コラム

胃がんの初期症状は?進行度やリスク要因についても解説

公開日:2025.01.20

胃がんの初期症状は?進行度やリスク要因についても解説

胃がんは男性のおよそ10人に1人、女性のおよそ21人に1人の割合で発症する病気です。

近年は罹患率が減少傾向にあるものの、依然として罹患率や死亡率が高い病気であるため、症状が進行してしまう前に早期発見・早期治療を行うことが重要となります。

この記事では、胃がんの初期症状について詳しく解説します。

胃がんの進行度と末期症状、胃がんの原因になり得る主なリスク要因、胃がんを早期発見するための検査・診断方法などをまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

胃がんは初期にはほとんど症状が現れない

胃がんは初期にはほとんど症状が現れない

胃がんは初期段階での症状がほとんど現れない病気です。

症状もなく静かに進行することが多く、進行してからも症状が現れない場合もあります。

進行すると現れる症状としては、胃やみぞおちの痛み、胃もたれ、胸やけ、吐き気、食欲不振などが挙げられます。

これらの症状が現れたらすぐに医療機関を受診し、必要に応じて胃カメラ検査を受けましょう。

胃がんの主な自覚症状

胃がんの主な自覚症状

胃がんには初期症状がほとんどありませんが、進行すると以下のような自覚症状が現れることがあります。

  • 吐き気や胸やけ
  • 胃の痛みや不快感
  • 食欲不振や体重減少
  • 食べ物が飲み込みづらい
  • 黒色便

ここでは上記5つの症状についてそれぞれ解説します。

吐き気や胸やけ

胃がんの症状の一つとして、吐き気や胸やけが挙げられます。

これは胃がんに限らず、胃炎など胃になんらかの異常をきたした際に起こりやすい症状の一つです。

胃がんができると食べ物がスムーズに通過しづらくなるため、胃酸の逆流が起こり、吐き気や胸やけといった症状として現れます。

胃の痛みや不快感

胃がんになると胃の痛みや不快感などの症状が現れることがあります。

胃の痛みには「キリキリ」「ズキズキ」といったようにさまざまな痛み方があります。

キリキリとする痛みは胃酸によって胃粘膜で炎症が起きているときに感じるものです。

胃がキューッと差し込むように痛む場合は、胃の筋肉がけいれんを起こしています。

キリキリ、ズキズキといった胃粘膜の炎症によって起こる痛みは、胃がん患者さんの中に多い症状となります。

食欲不振や体重減少

胃がんになると吐き気や胸やけ、胃の痛みなどによって、食欲不振や体重減少が起こることがあります。

胃の痛みや不快感によって食事がとれなくなると体重が減少していきますが、胃がんが進行していくとがん細胞自体が栄養を吸い取り、体重減少が起こる場合もあります。

そのため体重減少が止まらない場合は、深刻な病気にかかっている可能性が高いです。

食べ物が飲み込みづらい

胃がんができると胃や食道が圧迫され、食べ物が飲み込みづらくなることがあります。

ただし食べ物が飲み込みづらくなる症状は胃がんのみでなく、食道がんや咽頭がんなどにも起こり得るものです。

また粘膜にできた腫瘍が原因となっているほかにも、嚥下障害や逆流性食道炎、精神的ストレスなどが影響していることもあります。

黒色便

正常な便の色は茶褐色ですが、胃がんになると黒色の便が出ることがあります。

黒色便は古くなった血液が胃酸によって黒くなり、便に混じって排出されるもので、これは食道・胃・十二指腸のいずれかの臓器で出血している可能性が示唆されるものです。

ただし貧血症状が出ている際に服用する鉄剤が原因で黒色便が出る場合もあります。

思い当たる原因がない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

胃がんの進行度と末期症状

胃がんの進行度と末期症状

胃には粘膜層・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜と6つの層があり、どの層までがんが進行しているかや、近くのリンパ節への転移の有無などによって胃がんの病期(ステージ)が決まります。

ここでは胃がんの進行度や末期症状について解説します。

胃がんの進行度

胃がんの進行度はT1~T4まであり、それぞれの基準は以下のようになっています。

  • T1:胃がんが粘膜層、粘膜下層にとどまっている状態
  • T2:胃がんが固有筋層まで入り込んでいる・浸潤している状態
  • T3:胃がんが漿膜下層まで入り込んでいる・浸潤している状態
  • T4:胃がんが胃の表面に出ている状態、またはほかの臓器に転移している状態

このうちT1の粘膜下層までにとどまっている状態のものを『早期胃がん』、T2~T4の固有筋層以上に達している状態のものを『進行胃がん』といいます。

胃がんの病期はⅠA、ⅠB、ⅡA、ⅡB、ⅢA、ⅢB、ⅢC、Ⅳの8段階あり、上記の胃がんの進行度に加え、近くのリンパ節や離れた臓器・リンパ節への転移の有無によって診断されます。

総合的に見て判断されるため、例えば病巣が大きくても病変が浅く、ほかの臓器やリンパ節に転移がなければステージⅠと診断されることになるのです。

また胃がんの病期には臨床分類と病理分類があり、臨床分類は治療方針を決定するための指標に、病理分類は手術の治療方針を判断する際に用いられます。

それぞれの分類は以下の通りです。

【臨床分類】

【臨床分類】

【病理分類】

【病理分類】

引用:胃がん|国立がん研究センター がん情報サービス

胃がんは進行の遅い病気で、発がんから3~4年程度かけてゆっくり広がっていきます。

しかし粘膜下まで達する進行胃がんになると、進行が早まり、生存率も大きく低下していきます。

胃がんの5年相対生存率では、ステージⅠは90%以上、ステージⅡは70%程度、ステージⅢになると40%程度、ステージ4では5%程度となっているのです。

ステージⅠの早期胃がんの段階で発見・治療ができていれば生存率は90%以上となるため、定期的な検査による早期発見・治療がとても重要になります。

胃がんの末期症状

胃がんの末期症状には、お腹に水がたまる腹水貯留という症状や体重減少がみられるようになります。

がん細胞が腹腔(消化器官や子宮・卵巣が入っている空間)に広がると、腹膜上に転移し、腹腔内に水がたまる症状が起こります。

腹水が増えていくとお腹が常に張り、腹痛や便秘などがみられるようになるのです。

さらに腹膜に付着したがん細胞が大きくなると小腸や大腸などを圧迫し、ほかの臓器にもさまざまな症状が出るようになります。

胃がんの原因になり得る主なリスク要因

胃がんの原因になり得る主なリスク要因

胃がんの原因になり得る主なリスク要因として、以下の5つが挙げられます。

  • ピロリ菌感染
  • 肥満
  • 喫煙
  • 塩分の過剰摂取
  • 遺伝的要因

ここでは上記5つのリスク要因についてそれぞれ解説します。

ピロリ菌感染

胃がんの最大の原因となるのが、ピロリ菌の感染です。

ピロリ菌は胃の中に棲みつく細菌の一種で、感染すると胃粘膜を荒らして炎症を起こします。

ピロリ菌によって慢性的な炎症が引き起こされることで、胃粘膜の細胞ががん細胞化し、胃がんを発症するメカニズムになっています。

ピロリ菌は胃がんの原因になるだけでなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなり得るものです。

またピロリ菌に感染した時の自覚症状はほとんどなく、ピロリ菌検査や胃内視鏡検査などにより発覚するケースが多いです。

ピロリ菌は除菌によって胃がんリスクを減らせますが、除菌したからといってその後胃がんリスクが0になるわけではありません。

ピロリ菌感染のない胃がん報告もあるため、定期的な胃カメラ検査による胃がんの早期発見・治療が重要になります。

肥満

胃がんの原因になり得るリスク要因として、肥満が挙げられます。

国立がん研究センターの報告では、BMI27以上の男性は胃がんの発症リスクが高いことがわかっています。

肥満が胃がんの原因になり得る具体的なメカニズムは以下の通りです。

  • 食べ過ぎによるインスリン過剰分泌で傷つけられた細胞ががん化する
  • 胃に負担がかかる食生活を続けることで起こる逆流性食道炎や胃炎により胃粘膜を傷つける
  • 炎症を起こす物質が分泌されることで細胞が傷つけられがん化する

胃に負担のかかる食生活は胃がんのリスクになるため注意しましょう。

喫煙

喫煙は胃がんに限らず、咽頭がんや食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がんなどさまざまな臓器におけるがんの発症の原因になり得るリスク要因です。

喫煙者は非喫煙者と比べ、胃がんに罹患するリスクが1.6倍高いとされています。

タバコに含まれる発がん性物質が血液内に入り込み、全身に回ることでがんを発症する恐れがあります。

また喫煙者だけでなく、受動喫煙者も肺がんのリスクが1.3倍になるとされているため、家族やパートナーなどに喫煙習慣がある場合も注意が必要です。

塩分の過剰摂取

胃がんの原因になり得るリスク要因の一つとして、塩分の過剰摂取が挙げられます。

塩分は胃の粘膜を刺激する物質のため、普段から塩分を多量に摂取していると胃がんのリスクが高くなります。

特にいくらや塩辛などの塩分濃度の高い食品を好んで食べる人は注意が必要です。

遺伝的要因

遺伝的要因も胃がんの原因になり得るリスク要因の一つです。

CDH1遺伝子やBRCA1・BRCA2遺伝子といった、特定遺伝子の病的変化は胃がんの発生率を高める要因の一つとされています。

例えばBRCA遺伝子に変化が起こると、DNAに生じた病的変化を修復できない細胞となってしまい、がん細胞を増殖させてしまうことがわかっているのです。

また欧米のデータですが、BRCA1・BRCA2遺伝子に変化が起こる割合は、400〜500人に1人といわれています。

胃がんを早期発見する検査・診断

胃がんを早期発見する検査・診断

胃がんを早期発見する検査・診断は、胃内視鏡検査(胃カメラ)と胃部X線検査(バリウム検査)の2種類あります。

どちらも胃がん検診で受けることが可能です。

2つの特徴やメリット・デメリットを簡単にまとめると以下の通りです。

胃内視鏡検査(胃カメラ)胃部X線検査(バリウム検査)
検査方法鼻または口から内視鏡を挿入して消化管内を観察する検査検査前に2種類の液体を飲んでレントゲン撮影により観察する検査
メリット
  • 消化管内の小さな病変や平坦な病変を見つけやすい
  • 病変の組織採取やポリープ切除が可能
  • 経鼻内視鏡検査では医師と会話しながら検査を受けられる
  • 検査中の苦痛や不快感がほとんどない
  • バスによる巡回検診が可能
  • 胃内視鏡検査よりも費用が安い
デメリット
  • バリウム検査と比較してやや費用が高額
  • 経口内視鏡検査では咽頭反射が起こりやすい
  • 鎮静剤を使用する場合は当日車やバイクの運転ができない
  • 胃内視鏡検査と比べて得られる情報量が少ない
  • 少量の放射線被ばくがある
  • 異常が見つかった場合は胃内視鏡検査を受ける必要がある

ここでは胃内視鏡検査(胃カメラ)と胃部X線検査(バリウム検査)についてそれぞれ解説します。

胃内視鏡検査(胃カメラ)

胃内視鏡検査は、鼻または口から内視鏡を挿入して消化管内を直接観察する検査です。

主なメリット・デメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
  • 消化管内の小さな病変や平坦な病変を見つけやすい
  • 病変の組織採取やポリープ切除が可能
  • 経鼻内視鏡検査では医師と会話しながら検査を受けられる
  • バリウム検査と比較してやや費用が高額
  • 経口内視鏡検査では咽頭反射が起こりやすい
  • 鎮静剤を使用する場合は当日車やバイクの運転ができない

口から内視鏡を挿入する経口内視鏡検査の場合、咽頭反射(えづき)が起こりやすいデメリットがあります。

ただしこれは鼻から内視鏡を挿入する経鼻内視鏡検査や鎮静剤の使用により軽減可能です。

内視鏡検査は小さな病変や平坦な病変を見つけやすいため、胃部X線検査(バリウム検査)と比べて検査精度が高くなります。

病変の組織採取やポリープの切除も可能なため、検査後の診断や治療がスピーディーに行える点も大きなメリットです。

胃部X線検査(バリウム検査)

胃部X線検査(バリウム検査)は、X線を通しにくいバリウムと胃の中を膨らませる発泡剤の2種類の液体を検査前に飲み、レントゲン撮影を行う検査方法です。

主なメリット・デメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
  • 検査中の苦痛や不快感がほとんどない
  • バスによる巡回検診が可能
  • 胃内視鏡検査よりも費用が安い
  • 胃内視鏡検査と比べて得られる情報量が少ない
  • 少量の放射線被ばくがある
  • 異常が見つかった場合は胃内視鏡検査を受ける必要がある

胃部X線検査は胃内視鏡検査のような苦痛や不快感がほとんどない点が大きなメリットです。

バスによる巡回検診も行っているため、病院まで行くのが億劫という方でも気軽に受けられます。

ただし胃内視鏡検査と比べて得られる情報量が少なくなるため、検査精度が低くなる点には注意が必要です。

さらに異常が見つかった場合は後日胃内視鏡検査を受ける必要があり、結局二度手間になってしまう可能性もあります。

まとめ

胃がんは初期症状がほとんど現れない病気です。

主な自覚症状としては吐き気や胸やけ、胃の痛みや不快感、食欲不振、体重減少などが挙げられますが、これらの症状を自覚できるころにはがんが進行してしまっている可能性があります。

胃がんを早期段階で発見するためには、定期的に胃内視鏡検査または胃部X線検査を受けることが大切です。

大沼田メディカルクリニックでは、経鼻内視鏡による胃内視鏡検査を行っています。

鎮静剤を使用して苦痛や不快感をほとんど感じない状態で検査が受けられるため、胃がんが心配な方はぜひ当院まで気軽にご相談ください。

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