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ピロリ菌に感染してしまった場合、除菌しない方がいいのでしょうか。
ここではピロリ菌の除菌が推奨される病気や除菌治療方法について解説します。
ピロリ菌は、正式名称『ヘリコバクター・ピロリ』という胃の粘膜に生息する細菌です。
ピロリ菌は主に経口感染により感染することが多いですが、感染したら除菌すべきなのか悩んでいる方も多いでしょう。
この記事ではピロリ菌の除菌について詳しく解説します。
ピロリ菌を除菌するメリット・デメリット、ピロリ菌に感染すると起こる症状や病気、ピロリ菌の検査方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
ピロリ菌に感染してしまった場合、除菌しない方がいいのでしょうか。
ここではピロリ菌の除菌が推奨される病気や除菌治療方法について解説します。
研究によると胃潰瘍の90%以上、十二指腸潰瘍のほぼ100%の患者がピロリ菌に感染していることが分かっており、ピロリ菌は病気の発生と関係しています。
そのためピロリ菌の除菌は病気の予防や再発防止にとても重要なものです。
ピロリ菌を除菌することで胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発率が下がり、胃がんの発症率も抑えられます。
またピロリ菌に感染すると胃の粘膜が傷つけられてしまいます。
ピロリ菌の感染は幼少期に起こることが多く、年齢が高い人ほどピロリ菌に長く感染していた影響で胃が荒れてしまっている場合が多いです。
そのためピロリ菌の除菌は年齢によって効果に差が出やすく、70代以上など高齢の場合は発症率を約3分の1にしか抑えられません。
30代以下などの若い年齢でピロリ菌の除菌を行うことで胃がんを予防可能なため、病気の予防という観点ではなるべく早めに除菌を行った方がいいでしょう。
ピロリ菌の感染により引き起こされる可能性がある病気として、以下のようなものが挙げられます。
ピロリ菌に感染すると、食後の胃のムカムカ感や不快感、慢性胃炎の症状などがあらわれます。
慢性胃炎の主な症状はみぞおちの痛みや胃の不快感、吐き気などです。
これらの症状が現れたらピロリ菌に感染している可能性が考えられるため、ピロリ菌検査を受けてみましょう。
ピロリ菌の除菌治療方法は、胃酸を抑える薬1種類と抗菌薬2種類の計3錠を一週間服用することです。
1週間薬を飲み続けることで、80~90%程度の成功率でピロリ菌を除菌できます。
4週間以降にピロリ菌の感染有無を検査し、陰性となれば治療成功です。
1回目の治療(一時除菌療法)で成功しなかった場合は、使用する抗菌薬を変更し2回目の除菌治療(二次除菌療法)を行います。
ピロリ菌を除菌するメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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ピロリ菌を除菌する主なメリットとして、胃がんの発症リスクや胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発リスクを下げられることが挙げられます。
これらの病気はピロリ菌の感染との関連性が高いとされているため、除菌しておくことで病気の予防・再発防止ができるでしょう。
以前は胃潰瘍や十二指腸潰瘍、早期胃がんの治療といった症状が進んだ状態でなければ保険が適用されませんでしたが、現在は保険適用範囲が広がり、軽度の症状でもピロリ菌の除菌が行えるようになりました。
これにより自己負担額を抑えてピロリ菌の除菌が行えるため、ピロリ菌が見つかったら除菌がおすすめです。
一方で、ピロリ菌の除菌には胃食道逆流症になる可能性があるデメリットがあります。
これはピロリ菌の除菌によって胃が健康的な状態になることで、胃酸が以前よりも相対的に増えることで、食道に胃酸が逆流して発症するものです。
とはいえそれほど高い確率で起こる症状ではなく、万が一発症してしまった場合でも、胃酸分泌を抑える薬で症状を緩和できます。
上記を踏まえるとデメリットよりもメリットが上回るため、基本的には除菌はした方がいいでしょう。
ピロリ菌の主な感染経路は以下の通りです。
ここでは上記3つについてそれぞれ解説します。
ピロリ菌の感染経路で多いのが、口移しによる感染と考えられています。
例えば幼少期にピロリ菌に感染している親から口移しをされたり、家族間で食器を共有していたりすると感染する可能性が高くなります。
特に乳幼児期は胃酸の酸性度が弱く胃の免疫も弱いことから、ピロリ菌が定着しやすい環境になっており、感染リスクが高まるのです。
また乳幼児期にピロリ菌に感染してしまうと、除菌治療を行わない限りピロリ菌がなくなることはありません。
ピロリ菌は不衛生な環境で感染してしまうこともあります。
海外の衛生管理が整っていない地域では、便に触れた井戸水やゴキブリ、ハエなどから感染する場合があります。
日本は上下水道が整備され衛生的な環境が整っているため、ピロリ菌感染者は減少傾向にありますが、不衛生な環境は感染リスクが高まるため注意が必要です。
医療器具の殺菌・消毒不足によってピロリ菌に感染したケースも報告されています。
医療器具をしっかり殺菌・消毒されていないと、ピロリ菌に限らずさまざまな病気の感染が広がる恐れがあります。
ただし日本は医療器具の消毒・殺菌に関するガイドラインが定められており、衛生管理が徹底されているため、このようなケースは極めて稀です。
ピロリ菌に感染すると以下のような病気を発症する可能性があります。
ここでは上記4つの病気についてそれぞれ解説します。
ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜で炎症を起こし慢性胃炎を発症する恐れがあります。
慢性胃炎の原因はさまざまですが、ピロリ菌が原因によって発症するものは『ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎』と呼ばれます。
慢性胃炎の主な症状は以下の通りです。
慢性胃炎が長期間続くと胃の粘膜が薄く痩せていく萎縮が進み、『萎縮性胃炎』になります。
萎縮性胃炎になると食べ物が消化されにくくなり、食欲不振や胃もたれなどの症状を引き起こすことがあります。
そこからさらに症状が進行すると『腸上皮化生』という胃の粘膜が腸の粘膜のようになる現象が起こり、胃がんになる場合があるため注意が必要です。
また慢性胃炎は胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、機能性ディスペプシア(FD)などの病気を引き起こす恐れがあるため、早めに治療を行うことが推奨されます。
ピロリ菌によって胃の粘膜で炎症が起こると、胃潰瘍を発症する恐れがあります。
胃潰瘍は胃酸が胃の粘膜を自ら傷つけ、その炎症が深部にまで達してしまっている状態です。
胃潰瘍の主な症状には以下のようなものがあります。
上記のような自覚症状が全く現れず、健康診断や人間ドックで偶然発見されるケースもあります。
ピロリ菌に感染すると、十二指腸潰瘍を発症する恐れがあります。
十二指腸潰瘍は、胃液によって十二指腸の粘膜がえぐられたような状態になる病気です。
十二指腸潰瘍の主な症状は以下の通りです。
十二指腸は胃液と比べて筋層が薄いため、炎症が深く進行しやすく、出血や穿孔などを起こしやすい傾向にあります。
ピロリ菌に感染すると、胃がんを発症する恐れがあります。
胃がんの主な症状は以下の通りです。
胃がんは初期段階での自覚症状がほとんどないため、上記のような症状が現れたら胃がんがある程度進行してしまっている可能性が考えられます。
また胃がんとピロリ菌の関連性は2001年に行われた調査によって明らかになっています。
ピロリ菌感染者と非感染者でわけて7~8年間追跡調査を行ったところ、胃がんの発生率に以下のような違いが現れました。
ピロリ菌非感染者からは胃がんが1例も発生しなかったことから、ピロリ菌が胃がんの原因であると結論付けられているのです。
ただし、ピロリ菌がいなければ胃がんにならないというわけではありません。ピロリ菌を除菌してからも定期的に検査を受けることが大切です。
ピロリ菌には胃カメラを使用する検査方法と、胃カメラを使用しない検査方法の2つがあります。
さらに細かく分けると以下のような検査方法があります。
胃カメラを使用する検査 | 胃カメラを使用しない検査 |
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ここでは上記の検査方法についてそれぞれ解説しましょう。
胃カメラを使用する検査方法は以下の通りです。
ここでは上記3つの検査方法について解説します。
迅速ウレアーゼ試験は、内視鏡により採取した胃の組織の一部に特殊な反応試薬を投与し、ピロリ菌の有無を検査する方法です。
ピロリ菌はウレアーゼという尿素を分解する酵素の活性を持っているため、その特性を利用した方法となります。
短時間かつ低コストで行える検査方法ですが、除菌前の検査に使用されることが多く、除菌後の評価にはあまり適していません。
組織鏡検査は、内視鏡により採取した胃の組織を特殊な薬剤で染色し、顕微鏡でピロリ菌の有無を検査する方法です。
この方法は診断精度に限界がある点に注意しなくてはいけません。
培養法は、内視鏡により採取した胃の組織を培養し、ピロリ菌の有無を検査する方法です。
結果が出るまでに3~7日程度かかります。
迅速ウレアーゼ試験や組織鏡検査にも共通するものですが、内視鏡により組織を採取するため、たまたまピロリ菌がいない場所を採取してしまった場合、本当は陽性でも陰性という判定が出てしまう恐れがあります。
胃カメラを使用しない検査方法は以下の通りです。
ここでは上記3つの検査方法について解説します。
尿素呼気試験は、診断薬を服用後に呼気中の二酸化炭素変化を測定し、ピロリ菌の有無を検査する方法です。
ピロリ菌の持つウレアーゼは尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する働きを持っているため、その働きを利用した検査方法となっています。
薬を服用して容器に息を吹き込むだけで検査が行えるため、患者さんへの体の負担がほとんどないメリットがあります。
さらにすべての検査の中でも最も正確な検査方法です。
糞便中抗原検査は、便に含まれるピロリ菌の抗原の有無を検査する方法です。
この検査も患者さんへの負担が少なく、小児を含む全年齢で検査が可能です。
抗体測定は、尿や血液を採取してピロリ菌の抗体の有無を検査する方法です。
尿を採取する『尿中抗ピロリ菌抗体測定』は人間ドックや検診で採用されているケースが多いです。
血液を採取する『血中抗ピロリ菌抗体測定』は胃がんのリスク判定にも採用されています。
ピロリ菌に感染すると慢性胃炎や胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気を発症する恐れがあります。
ピロリ菌を除菌することでこれらの病気の再発リスクや発症リスクを抑えられるため、積極的に除菌したほうがいいでしょう。
ピロリ菌に感染しているかどうか調べるためには、ピロリ菌検査を受ける必要があります。
特に症状がなくてもピロリ菌に感染している場合があるため、一度検査を受けてみましょう。
大沼田メディカルクリニックでは、内視鏡を使った検査と血液検査を組み合わせたピロリ菌検査を行っています。
陽性と判定が出た場合は薬によるピロリ菌の除菌も可能なため、ぜひ当院までご相談ください。
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