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「胃がんになる原因はピロリ菌以外にもある?」「胃がんになりやすい人はいる?」など、胃がんについての疑問や気になることがある方は多いでしょう。
胃がんは、日本人に多く見られるがんです。代表的な原因としてはピロリ菌が知られていますが、その他にもリスクを高める要因があります。
この記事では、胃がんの原因やなりやすい人の特徴、現れることのある症状、検査方法などについて詳しく解説します。
早期の胃がんは自覚症状がほぼなく、気づかないうちに悪化してしまっている可能性もあるため注意が必要です。早めに検査を受けて、早期発見・早期治療につなげましょう。
胃がんとは、胃にできる悪性腫瘍の総称です。
胃は内側から順番に「粘膜」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜」と層になっており、胃がんは最も内側の「粘膜」部分の細胞がなんらかの原因でがん細胞となることで起こります。
胃がんは、がんがどこまで浸潤(水が染み込んでいくように周囲にがんが広がっていくこと)しているかによって以下のように区別します。
胃がんは日本人に多く見られるがんとして知られ、かつては日本人のがんによる死亡数で1位となっていましたが、医療技術の進歩によって死亡率は低下しています。
しかし、それでも胃がんによる死亡数は2022年で男性3位、女性5位と、胃がんでなくなる方は多いです。
胃がんは初期症状がほとんどなく、気付いたときにはかなり進行してしまっているケースも存在します。
早期発見すれば多くの場合で治癒できるため、定期的な検査を受けることが大切です。
胃がんの一番の原因といわれているのが、ピロリ菌です。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃がんと深い関係があり、1994年にはWHO(世界保健機関)がピロリ菌を「確実な発がん因子」と認定しています。
胃の中は胃酸があるため細菌などは生息できないと考えられていましたが、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を出して胃酸を中和することで、強酸の中でも生き続けることができるのです。
ピロリ菌が胃の中に長く住み着くと、胃の粘膜に炎症が起こり、ほぼ100%の確率で胃炎が起こります。
この状態のまま放置してしまうと胃粘膜が薄く痩せ萎縮した「萎縮性胃炎」となり、胃がんのリスクが高まります。
ピロリ菌は不衛生な環境に存在し、衛生環境が良くなったことで感染率が減少していますが、唾液などからも感染するため注意が必要です。
当院では、検査で胃がんが見つかった方のほぼ100%にピロリ菌感染が見られました。
喫煙も、胃がんのリスクを高める原因です。
さまざまな研究から、日本では喫煙によって胃がんのリスクが確実に高くなることが示されており、特に男性はその傾向が強いといわれています。
タバコを吸う人は吸わない人と比較して約2倍胃がんになりやすいというデータもあり、吸う本数が増えるにつれて、胃がんの発生率が高くなることもわかりました。
厚生労働省が公表した「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」によれば、喫煙は胃がんだけでなく、口腔・咽頭がん、喉頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮頸がん、膀胱がんといったがんのリスクも高めることがわかっています。
味の濃い食べ物を好んで食べるなど、塩分の摂り過ぎも、胃がんのリスクを高めます。
特に男性の場合はリスクに大きく影響し、食塩摂取量が最も少ない人と比較すると、中程度の人は1.96倍、最も多い人は2.23倍、胃がんのリスクが上がったという研究結果があります。
塩分の過剰摂取は高血圧を招き、生活習慣病を引き起こすことにもなるため、減塩を心がけましょう。
飲酒も、胃がんの発生リスクに影響する要素です。
研究では、男性の場合、お酒を全く飲まないグループと比較すると、飲酒量が多くなるほど胃がんのリスクが上昇することがわかっています。
女性の場合は有意なリスク上昇は見られなかったものの、噴門部胃がんではリスクが高くなりました。
また、国立研究開発法人国立がん研究センターを中心に行われた近年の研究結果では、アルコールを代謝しにくい体質の人がお酒を飲むと難治性の「びまん型胃がん」のリスクが高まるという結果も出ています。
両親や兄弟、姉妹など、家族ががんにかかったことのある方の場合、将来的にがんにかかるリスクが高くなることが指摘されています。
また、家族で胃がんを発症された方がピロリ菌に感染していた場合は、早めに検査を受けてご自身のピロリ菌感染の有無を確認しておきましょう。
肥満も胃がんの発症リスクを高める危険因子です。
BMI(体格指数)でいくつかのグループに分けて胃がん罹患リスクを比較した実験では、男性の場合「BMI23以上25未満」の普通体重グループに比べ、「BMI27以上」と肥満グループは胃がんのリスクが上昇する結果が出ています。
なお、女性の場合は有意な関連はみられなかったといいます。
肥満は胃がんだけでなく生活習慣病や心筋梗塞や脳卒中といった病気にもつながるため、注意が必要です。
胃がんは早期の場合はほぼ自覚症状がないこともありますが、中には症状が見られるケースもあります。
ここからは、胃がんの症状について解説します。
多くの場合、早期の胃がんで自覚症状は起こりません。
胃の不快感や違和感、胃痛、胸焼け、お腹の張り、食欲不振、吐き気などが起こることもありますが、これらは胃炎や胃潰瘍でも見られるため、見逃されてしまいがちです。
胃炎や胃潰瘍などが原因か、それとも胃がんが原因かは患者さん自身では判断できず、内視鏡検査(胃カメラ検査)などの検査を行わなければ、診断できません。
最近では検診でバリウム検査ではなく胃カメラ検査が行われることも増えており、胃がんが早期発見されるケースも増えてきています。
放置すると危険な自覚症状としては、以下のようなものがあります。
初期段階の胃がんは症状が見られないことも多く、かなり進行しても症状が見られないこともあります。異変が見られたら放置せず、病院を受診しましょう。
また、特に症状や不調がなくても定期的に胃カメラ検査を受けて、消化管の状態をチェックすることが大切です。
ピロリ菌の感染や喫煙・飲酒、塩分過剰などの要因を除いた場合、胃がんになりやすい人の特徴は以下の通りです。
ここからはそれぞれの項目について、詳しく解説します。
胃がんの罹患率と死亡率は女性よりも男性が高く、男性の方がリスクが高い傾向にあります。また、男女差は40歳未満では小さいものの、40歳以降は差が大きくなるといいます。
男女差が生じる原因には複数の要因が考えられますが、中でも主な原因と考えられているのが「生活習慣」です。
男性の方が女性よりも過度な喫煙や飲酒をする傾向があるため、これが胃がんのリスクに影響すると考えられています。
胃がんは中高年以上でリスクが高くなり、特に50歳代から急増し、50〜70歳頃がピークといわれています。
そのため、多くの自治体では基本的に50歳以上の方を対象に胃がん検診を行っています。(胃のX線検査は40歳以上)
ただし、40〜50歳の方にも多くの胃がんが見られるため、早期発見のためにも定期検診を受け、気になることがあれば早めにクリニックを受診することが大切です。
胃がんは、粘膜部分から発生する「腺がん」が90%を占めます。腺がんはがん細胞の増殖の仕方によって、以下の2つに分けられます。
ここでは、それぞれのがんについて詳しく解説します。
分化型胃がんは、がん細胞がまとまって増殖するタイプのがんです。粘膜から発生し、集団をつくって増えていきます。
分化型胃がんの場合、胃全体に広がることは少なく、進行も比較的緩やかといわれています。高齢の方や男性に多く見られるのがこのタイプです。
未分化型胃がんは、がん細胞がバラバラと散らばって増殖するタイプのがんです。
分化型胃がんと比較すると進行が早く、胃壁の表面にわかりやすい病変が作られないことが多いため早期に発見しにくいとされています。
未分化型胃がんは若い方や女性に比較的多く見られ、スキルス胃がんも未分化型胃がんに分類されます。
胃がんを調べるには、主に以下のような検査方法があります。
ここからは、各検査について詳しく見ていきましょう。
バリウム検査(X線造影検査)は、胃を映し出すための「バリウム(造影剤)」と、胃を膨らませる「発泡剤」を飲み、X線(レントゲン)によって胃の状態を確認する検査です。
バリウムはX線を透過しないため、口、食道、胃、十二指腸と、体の中を流れていく様子を確認できます。
バリウム検査は胃カメラ検査よりも簡単に受けられるものの、がんの確定診断はできず、また小さな病変や早期がんが見逃されてしまうケースがあります。
しっかりと胃がんの検査をしたいのであれば、バリウム検査と合わせて内視鏡検査を受けましょう。
内視鏡検査(胃カメラ検査)は、口もしくは鼻から内視鏡スコープを挿入し、喉・食道・胃・十二指腸を直接観察する検査です。
早期胃がんの発見に有効で、内視鏡検査でなければ見つけるのが難しいがんもあります。
また胃カメラ検査では、がんの疑いがある病変が見つかった場合は採取し、詳しい検査(病理組織検査)を行うことも可能です。
胃カメラ検査と聞くと苦しい・しんどいといったイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、鎮静剤を使用すれば半分眠ったような状態で検査できるため、苦しさはかなり軽減できます。
胃がんの可能性がある場合、精密検査の一つとしてCT検査を行います。胃がん周囲の臓器への浸潤・転移している病変があるかどうかを調べられます。
血液検査では、腫瘍マーカーの値を検査できます。
体内でがんができると健康時にはほぼ見られない、それぞれのがん特有の物質が作られて、血液中や尿中に現れます。
この物質を腫瘍マーカーといい、血液検査によってこの値を調べます。
胃がんの治療方法には下記のような方法があり、進行度によって適した方法が選択されます。
ここからは、それぞれの治療法について解説します。
内視鏡的切除は、内視鏡を使ってがんの病巣を切除する方法です。
基本的にはがんが粘膜内に留まり、他の場所への転移が見られないケースで行われ、胃カメラを口の中から入れてモニターを見ながら手術を行います。
小さな傷で手術できるため体への負担が少なく、回復も早いというメリットがあります。
がんが進行して転移が起こっている可能性が考えられる場合は、胃を切除する外科手術を行います。
胃の一部だけを手術することもあれば、胃全体や周囲の臓器の組織を一緒に切除することもあります。
内視鏡的切除や外科手術ができない場合には、抗がん剤を使った化学療法が行われます。
また、手術前にがんを小さくする目的や、再発予防のために化学療法が行われるケースもあります。
胃がんは無症状の場合が多く、早期胃がんだけでなく、かなり進行した場合も症状が現れないことがあります。
早期胃がんは胃カメラ検査をきっかけに見つかることが多く、定期的に検査を受ければ、早期発見・早期治療が可能です。
胃がんが多くなる40〜50代の方はもちろん、好発期手前の30~40代、胃の不調を感じている方、家族に胃がんになった方がいる場合などは、一度胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
胃がんの原因はピロリ菌だけでなく、喫煙や飲酒、塩分の過剰摂取、肥満など生活習慣との関わりも深いです。
胃がんにかかりやすいといわれるのは男性や中高年以上の方ですが、進行の早いスキルス胃がんなどの未分化型胃がんは若い方や女性にも見られます。
胃がんは早い段階で発見して治療すれば胃を切除する必要もなく、治る病気です。健康のためにも早めに検査を受けましょう。
大沼田メディカルクリニックでは、患者さんの負担の少ない「鼻からの胃カメラ検査(経鼻内視鏡検査)」を行っています。
鎮静剤も使用しますので、胃カメラ検査に不安がある方や口からの胃カメラ検査でつらい思いをしたことのある方は、ぜひお気軽に当院へご相談ください。
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