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「胃カメラ検査でピロリ菌感染はわかる?」「ピロリ菌を除菌した後は胃カメラ検査を受ける必要はないの?」胃カメラ検査やピロリ菌について、このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
消化器系の病気を引き起こし、胃がんのリスクを上昇させる原因となるピロリ菌は、胃カメラ検査を始め、さまざまな方法での検査が可能です。
この記事では、ピロリ菌とはどのような菌か、胃カメラを使うピロリ菌検査、胃カメラを使わないピロリ菌検査、除菌治療後の胃カメラ検査の必要性などについて詳しく解説します。
ピロリ菌は多くの病気を引き起こす原因となりますが、除菌治療は難しいものではありません。ピロリ菌を検査して、必要があれば除菌治療を行いましょう。
ピロリ菌は正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ」といい、人の胃の粘膜に生息するらせん状をした細菌です。
胃の中は胃酸によって強い酸性になっており、細菌などは生息できないとされていました。
しかし、ピロリ菌は一度「ウレアーゼ」という酵素を出して自分の周囲の酸を中和することで、胃の中でも長く生き続けられます。
ピロリ菌がいると慢性胃炎・萎縮性胃炎・胃・十二指腸潰瘍といった消化器系の病気を引き起こし、胃がんのリスクを上昇させることで知られていますが、これはピロリ菌の行動によるものです。
ピロリ菌がべん毛を高速回転させてドリルのように胃の中を進む際に胃粘膜や胃壁を傷つけるため酸による影響を受けやすくなり、さまざまな疾患につながります。
1994年にWHO(世界保健機構)はピロリ菌を「発がん物質」として認定しており、ピロリ菌に感染していると胃がんリスクは約5倍(隠れた陽性者を加えると10倍)になることも判明しています。
胃がんの約7割はピロリ菌に感染しているといわれていますが、当院の検査では胃がんが見つかった方からほぼ100%の割合でピロリ菌が見つかっています。
ピロリ菌感染が疑われる場合は早めに検査をして、除菌治療を行うことが大切です。
ピロリ菌検査にはいくつかの方法がありますが、大きく分けると「胃カメラ(内視鏡)を使うピロリ菌検査」と「胃カメラ(内視鏡)を使わないピロリ菌検査」の2つがあります。
胃カメラを使うピロリ菌検査は、以下の通りです。
ここからは、それぞれの検査方法について詳しく解説します。
胃粘膜所見判定は、胃カメラ検査で胃の粘膜の状態を医師がチェックし、ピロリ菌感染を判定する方法です。
胃粘膜所見判定によって医師がピロリ菌感染の可能性が考えられると判断した場合は、その他の検査も行ってピロリ菌の確定診断をします。
当院では、胃カメラ検査による胃粘膜所見判定と、血液検査を組み合わせたピロリ菌検査を行っています。
血液中のペプシノーゲン値を測定し、陽性判定となった場合は胃がんリスクが高いとして、精密検査をおすすめしています。
病理組織鏡検法は、胃カメラ検査の際に胃の粘膜の一部を採取し、特殊な方法で染色を行ってから顕微鏡で観察する方法です。
顕微鏡で組織を直接観察することで、ピロリ菌がいるかどうかがわかります。
迅速ウレアーゼ試験は、胃カメラ検査の際に採取した胃粘膜の組織を尿素とpH指示薬を混ぜた検査試薬内に入れ、色調変化によって判定する方法です。
ピロリ菌感染がある場合は、ピロリ菌が出すウレアーゼによって尿素が分解されてアンモニアが生じ、pH指示薬の色が変化します。
ピロリ菌に感染している場合は赤く、ピロリ菌がいない場合は黄色に変わります。
培養法は、胃カメラ検査の際に採取した胃粘膜の組織をピロリ菌の発育しやすい環境下で5~7日ほど培養し、ピロリ菌の存在を確認する方法です。
培養された菌の薬剤耐性をチェックする薬剤感受性試験や、菌株の遺伝子検査など、他の検査にも利用できます。
胃カメラ(内視鏡)を使わないピロリ菌検査には、以下のようなものがあります。
ここからは、それぞれの方法について詳しく解説します。
血中・尿中抗体検査は、ピロリ菌の感染によって血液中でつくられる抗体を血液や尿を検査することで測定する検査です。
ただし、血中・尿中抗体検査は過去の感染も認識し、除菌後も一定期間陽性が持続するため注意が必要です。
便中抗原測定は、大便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。専用容器で便を採取して短時間で判定でき、身体への負担もかかりません。
ピロリ菌が出すウレアーゼという酵素は、胃の中の尿素を分解して「アンモニア」と「二酸化炭素」を作り出し、二酸化炭素は呼気中に排出されます。
尿素呼気試験はこの原理を利用した検査で、尿素を含んだ検査薬を飲み、呼気の中の二酸化炭素の量を測定することで、ピロリ菌感染を判定します。
ピロリ菌除菌治療後の、除菌判定(胃の中に本当にピロリ菌が存在しなくなったかを確認するもの)に用いられることも多い検査です。
ピロリ菌に感染していない胃粘膜と、ピロリ菌に感染した胃粘膜では、見た目が変化します。
ここからは、ピロリ菌感染によって胃粘膜にどのような変化が起こるのか、詳しく見ていきましょう。
ピロリ菌に感染していない胃粘膜は、表面が滑らかで艶や光沢があり、粘膜は粘り気が少なくサラサラしています。
また、正常な胃粘膜は、RAC(regular arrangement of collecting venules)が見られることも特徴です。
RACとは、ピロリ菌未感染の胃に見られるヒトデや鳥の足のような形をした微小な血管のことで、炎症や萎縮がない健康な胃の証拠と考えられています。
ピロリ菌未感染の胃粘膜には「胃底腺ポリープ」が見られることもあります。
胃底腺ポリープは健康な胃粘膜に発生する良性のポリープで、非腫瘍性であり胃がんになるリスクはほとんどありません。
ピロリ菌に感染すると、胃粘膜は全体的に赤くなり、粘液が白く濁って、胃のひだも厚くなります。
ピロリ菌に感染するとほぼ100%の方に胃炎が起こるといわれており、慢性的な胃炎となると健康な胃の証拠であったRACは消失してしまいます。
また、ピロリ菌に長く感染すると、胃粘膜が薄くぺらぺらになる「萎縮」が起こることも特徴です。正常なひだがなくなってしまい、粘膜の下を走る血管が透けて見えるようになります。
この状態を「萎縮性胃炎(慢性胃炎)」と呼び、ピロリ菌感染による特徴的な変化の一つです。
注意が必要な胃の状態は、以下の通りです。
それぞれの胃の状態について詳しく見ていきましょう。
萎縮性胃炎(慢性胃炎)は、胃の粘膜が慢性的な炎症を起こしている状態を指します。
胃の粘膜が薄く弱くなり、食後のむかむか、胃もたれ、胃の痛み、胸やけ、吐き気、腹部膨満感(お腹の張り)、食欲不振といった症状が見られます。
萎縮性胃炎だからといって必ずしもピロリ菌がいるとは限りませんが、萎縮性胃炎の多くがピロリ菌の感染によって引き起こされることも事実です。
胃には高い再生能力が備わっていますが、胃粘膜の萎縮が進行すると、正常な再生ができなくなります。
すると正常な胃の上皮(粘膜)ではなく大腸や小腸の粘膜に似た上皮が形成されるようになり、この状態を「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」といいます。
腸上皮化生の粘膜からは胃がんが発生しやすく、腸上皮化生を伴う萎縮性胃炎(慢性胃炎)は、前がん病変(がんになる前段階)と考えられています。
腸上皮化生の段階までになると、ピロリ菌が生息できないほど胃の粘膜の状態が荒れてしまうため、ピロリ菌が激減・消失して、検出できないことも少なくありません。
つまり、「ピロリ菌が陰性と判定されるものの、胃がんリスクが高い状態」となるため、注意が必要です。
皺襞肥大型胃炎は、ピロリ菌感染を起こした胃に多く見られる、ひだが肥厚した状態となる胃炎です。
皺襞肥大の程度によって胃がんのリスクが増加し、具体的にはひだの幅が7mm以上と太いものは、4mm以下と比較して胃がんのリスクが約35倍高まるとの報告があります。
ピロリ菌が原因となっている場合、除菌治療を行うことで改善するため早めのピロリ菌除菌を行うことが大切です。
鳥肌胃炎は、胃粘膜が鳥肌のように見える状態の胃炎で、若い女性に多く見られることが特徴です。
鳥肌胃炎と消化性潰瘍や胃がんの合併例も報告されており、胃がんのリスクが高いため注意しましょう。
検査によってピロリ菌に感染しているとわかった場合は、ピロリ菌を除菌するための治療を行います。
ピロリ菌は薬によって除菌できるため、1種類の「胃酸分泌を抑制する薬」と2種類の「抗生剤」の3つの薬を1日2回、1週間服用します。
およそ8割の人が1回目の除菌で菌を死滅させることに成功しますが、ピロリ菌が残っていた場合は再度薬を服用します。
2回目の除菌では9割とほとんどの人がピロリ菌を完全に胃の中から除去できるとされています。
一度除菌に成功すれば、再感染することはほぼありません。
ここからは、ピロリ菌検査に関するよくある質問について解説します。
ピロリ菌を除菌すれば危険性を下げられるのは事実ですが、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。
ピロリ菌による胃炎の状態が進んでいた場合ほど、除菌後も健康な胃に比べて胃がんのリスクは高くなるため、1年に1回ほどのペースで定期的に胃カメラ検査を受けることが大切です。
ピロリ菌検査が保険適用となるのは、胃カメラ検査によって萎縮性胃炎(慢性胃炎)や胃潰瘍、胃・十二指腸潰瘍と診断された場合です。
症状がない状態での検査や、胃カメラを使わない検査の場合は自費診療となります。
ピロリ菌は胃に炎症を引き起こし、萎縮性胃炎や胃がんなどさまざまな病気を引き起こす原因となるため、感染が見つかった場合は基本的には除菌治療が推奨されます。
しかし、ピロリ菌の除菌治療にはデメリットもあります。
抗生剤を使用するため軟便や下痢といった副作用が起こることがあり、またピロリ菌が抑えていた胃酸の分泌が正常になることで、除菌後ごくまれに逆流性食道炎になる方がいます。
このようなことから「ピロリ菌は除菌しない方がいい」といわれることもあるようです。
とはいえ、ピロリ菌を除菌すれば胃がんリスクを確実に減らせることもわかっているため、治療方針に迷っている方は医師に相談してみるといいでしょう。
ピロリ菌検査をした方がいいのは、以下のような方です。
ピロリ菌感染を調べる方法はいくつかあり、胃カメラ検査によっても調べることが可能です。
ピロリ菌は胃がんとも深い関係があり、ピロリ菌に感染していると胃がんのリスクが高まります。ピロリ菌の除菌治療は薬を飲むだけでできるため、感染の疑いがある方はまずは検査を受けてみましょう。
大沼田メディカルクリニックでは、胃粘膜所見判定と、血液検査を組み合わせたピロリ菌検査を行っています。
当院では負担の少ない「経鼻内視鏡検査(鼻からの胃カメラ検査)」を実施しており、鎮静剤も使用するため苦しさを抑えた検査が可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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